第3章 スタート ページ9
今日はこれで解散、という訳ではなくそのまま私の住むマンションへ行くことになった。
きりやんさん曰くもう準備は整っているから行動に移すなら早い方が良い、との事。
マンションの一室に着き、中に入る。見慣れた部屋は20代の女性にしては質素に感じる程物が少ない。
物置の奥からキャリーケースを引っ張り出し、そこに数着の服と下着、化粧品類などを詰め込んでいく。
家具や電化製品は後日きりやんさんの知り合いが引き取ってくれるらしく、そのままにした。
お客様から貰ったぬいぐるみやブランドバッグはどうしよう。
…これらも一緒に引き取ってもらおうか。新しい人生を歩むのにこれらは不必要だろう。
想像より少ない荷物に驚きながらも、準備が整った。
「きりやんさん終わりました」
部屋の外で待ってくれていたきりやんさんに一言かけ、部屋に鍵をかけた。鍵はポストに入れて知り合いの人に託す。
「よし、もう仲間が着くんで下降りましょうか」
きりやんさんはそう言うと、私のキャリーケースを持ってくれた。流石に持たせる訳にはいかないと思い奪い返そうとすると、止められた。
私が思っていた以上にスマートなきりやんさんは、仲間の車を発見したようで車に近づくと荷物をトランクに入れた。
「俺助手席に乗っちゃうんでAさんは後ろの席にどうぞ」
「分かりました」
後部座席に乗るとルームミラー越しに運転席にいる人と目が合った。軽く会釈すると運転席の男性は口を開いた。
「どうも〜僕Broooockっていいます全然緊張しなくて大丈夫ですよ〜」
あははと笑いながらミラー越しに手を振るBroooockさんは、きりやんさんと違ってほんわかふわふわな雰囲気を纏っている。どこか掴めない彼に戸惑っていると助手席に乗り込んだきりやんさんにBroooockさんは頭を叩かれた。
「痛いよ〜、、仲良くなろうとしただけなのにぃ…」
「うるさい!さっさと車出せ!」
いつもより口が悪いきりやんさんと泣き真似をするBroooockさんのやり取りが面白くて少し笑ってしまった。和やかな雰囲気になった車内に満足したのか、車はやっと発進した。
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作者名:葵 | 作成日時:2024年3月12日 0時