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やっとの思いで押した番号は、無機質な音を立てて繋がらずにいた。
それもそうかこんな夜中に電話に出るわけない。よく考えたらこんな時間に電話すること自体迷惑だし。

一度電話を切り、かけ直そうか迷っているとスマホが震えた。
スマホに映る番号は私がかけていた番号で、すぐさま電話に出た。




「あ、でた。もしもし?」



「もしもし、、きりやんさん
夜中にすみません」



「あ?あぁ、Aさんか。大丈夫っすよ俺らも夜型なんで
…電話してきたってことは、もう意思固まったみたいですね」



「はいっ…!」




電話越しに鼓膜を刺激する声に、謎の緊張を覚える。
初めてちゃんと話した時に鼓動が早くなったことも今緊張しているのも今まで味わったことの無い感覚で、これをどうやって言葉で表せばいいのか、なんという感情に当てはまるのかさっぱり分からない。




「俺らがいる拠点に移り住むのが1番手っ取り早いと思うけど、多分引越し準備もあるし退職手続きとかもあるしですぐとかは無理っすよね」



「退職はすぐ出来ます。キャバ嬢が飛ぶなんてことざらにありますし
あの、、近々会えませんか?会ってお話したいです」




口が滑った、と言ったらいいだろうか。声を聞いたら会いたくなってしまうなんてそんなことあっていいのだろうか。
ましてや、きりやんさんとはまだ2回しか会っていないしお互いのこともよく知らない。
それなのに、こんな気持ちを抱いているなんて気持ち悪いと思われてしまう。




「っ、あ、あの、やっぱり、大丈夫です」



「会いましょうか」



「へっ…?」



「え?」




会いましょうと言われたことに驚いてしまい、変な声が出てしまった。直後にきりやんさんも変な声を出すものだから、思わず笑いが漏れた。




「ふふっ、、ごめんなさい、笑ってしまって、んふふっ」



「もぉ〜!…ハハッ良かった、Aさんちょっと声暗かったから
…じゃあ、明日の夜9時に前話した公園で待ってます」



「きりやんさんにはなんでもお見通しなんですね
分かりました、明日夜9時に」




おやすみなさいと言って電話を切ろうとすれば、きりやんさんもおやすみと言ってくれた。
こんなに素で笑ったのは久しぶりな気がする。それ以前に、自然体のありのままの自分で話せたこと自体が久しぶりだった。

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作品ジャンル:恋愛
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作者名: | 作成日時:2024年3月12日 0時

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