第2章 逃避行 ページ5
貰った電話番号はスマホに登録したまま、かけられず水を続けていた。
きりやんさんの言う通り、普通をなりたくてここから逃げたいと思っている自分がいる。その一方である程度の収入が得られてそこそこな生活を送れる今のままでも良いかなと思っている自分もいた。
「麗さんご指名です」
「今行きます」
黒服に呼ばれ、VIPルームへと向かうとそこには成瀬さんがいた。久しぶりに来客した成瀬さんは少し風貌が変わっているように思えた。
「お久しぶりです成瀬さん」
「久しぶり。なかなか来れなくて悪かったね」
久しぶりということもあり話がいつもより弾む。シャンパンも多めに入れて貰えた。
少し酔いが回ってきた頃、成瀬さんに最近のことを打ち明けた。
「あの、成瀬さんってきりやんさんとお知り合いですよね?
…きりやんさんってどんな方ですか?」
私にとって唯一きりやんさんと繋がりのある成瀬さんにそう聞くと、成瀬さんは目を見開いた。
これはもしかしてタブーだっただろうか
「あいつ、麗ちゃんにもう名前明かしたんか?早いな笑」
成瀬さんはどこか噛み締めるようにしみじみとしながらそう呟いた。良かった。タブーではなさそう。
「きりやんはな、良い奴 その一言に尽きる。なんでも出来るオールラウンダーなくせに時々不器用なところがあるのが良いんだよ
…麗ちゃん、その感じだときりやんのところに行こうか迷ってるんだろ?」
きりやんさんといい成瀬さんといい、どうしてこうも簡単に私の心が分かるのだろうか。
成瀬さんの問いに頷くと、成瀬さんはきりやんのやつ見る目あるなぁーと笑いながら話を続けた。
「抜け出したいんだったら絶対行きな
きりやんの人柄は俺が保証してやる」
その一言がどれだけ私の背中を押したか、誰にも分からないだろう。
私は営業が終わった直後に、かけれずにいたきりやんさんの番号を押していた。
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作者名:葵 | 作成日時:2024年3月12日 0時