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気付いたらお店に着いていて、中に入ると馴染みの黒服が迎えてくれた。
いったんお客様と別れてバックヤードに荷物を置き、ドレスに着替えてからお客様が座っている卓へと向かった。
「佐藤さんお待たせしました〜今日も同伴ありがとうございます」
「やっと来たね
今日は何飲みたい?好きなの入れてあげるよ?」
今日のお客様、佐藤さんは私が新人の頃から指名してくれる方。私を指名してくれるお客様の中では割と良客ではある。
ただ、この人も欲望まみれであることには変わりない。
酔いが回ればそこら辺のおじさんと同じように接触しようとしてくるし枕を求めることもある。
所詮人間なんてそんなものだよな、そう思いながらハリボテの笑顔で接客をしていく。
世界的に有名でそこそこの値段をするロゼを口にすると、黒服が来た。
「麗さん、新規指名です。VIPへお願いします」
新規指名でVIPなんて珍しい。企業の接待かな?なんて考えながらヘルプの嬢と代わり、VIPルームに入ると雰囲気がガラリと変わった。
一言で表すと一触即発。
そんな場所に足を入れた私はどうすることも出来ない。
ただただいつも通り接客をするしか無かった。
「は、初めまして。麗と申します。ご指名ありがとうございます」
「あんたが麗か。写真指名だけどなかなか良いじゃん」
私を写指した人は見るからにそっちの世界にいた人。隠してるけど小指が無い。
一方でお連れの方は金髪の緩いパーマで眼鏡をかけている、そういう世界とは無縁そうな人。見た感じ20代前半ってところだろう。
写指したという人の隣に座り接客をしようとしたとき、金髪の方が急に立ち上がった。
「じゃあ、俺帰るんで。さっきのことですけど、俺はアイツらがいなくならない限り続けるんで
…まあ、何かあったら頼りますわ」
そう言って金髪の方はVIPルームを出てしまった。
…まずい、送りいかないと
「すみません、あちらの方の送り行きますね」
「あぁ、あいつは気にしなくていいと思うよ?俺が無理やり連れてきただけでこういう場は好きじゃないしね
麗ちゃんもごめんね、気ぃ使わせて」
そう言って写指の人、もとい成瀬さんはお詫びにとソウメイを入れてくれた。
その後はVIPと他の卓を行き来しながら接客をし、その日の営業を終えた。
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作者名:葵 | 作成日時:2024年3月12日 0時